アセトンのケト-エノール互変異性

2011年8月10日公開

はじめに

アセトンはケト-エノール互変異性を示すことが知られています.

CH3C(O)CH3 → CH3C(OH)CH3

このケト-エノール互変異性について,DFTやPost HF法によって,CCSD(T)/CBSレベルでの計算結果をどの程度再現できるか検証してみました.

実際のところは,ワークステーションのメモリを増強したのでテスト計算した結果に色々追加しただけだったりしますが.

計算結果

表1:アセトンのケト-エノール異性化エネルギー (真空中,構造はTPSS-D3/def2-TZVP(-f)).
方法 ΔE [kcal/mol] ケト体の計算時間 [sec]
CCSD(T)/CBS 11.18 7500
CCSD(T)/cc-pVTZ 11.62 1068
LPNO-CEPA/1/cc-pVTZ 11.92 60
LPNO-CEPA/1/def2-TZVPP 11.77 47
SCS-MP2/cc-pVTZ 12.51 27
MP2/cc-pVTZ 11.82 28
B2PLYP/def2-TZVPP 11.97 28
B2PLYP-D3/def2-TZVPP 12.07 28
B3LYP/def2-TZVPP 11.43 28
B3LYP-D3/def2-TZVPP 11.65 28
TPSS/def2-TZVPP 12.55 32
TPSS-D3/def2-TZVPP 12.74 32

シンプルな系だからか,いずれの方法でもCCSD(T)/CBSの結果を再現できています.強いていうと,分散力補正やspin-component scaled MP2などのad-hocな補正を含む方法は,ごく僅かにですが再現が悪いようです.

計算時間に着目すると,CCSD(T)/CBSで2時間,CCSD(T)/cc-pVTZで17分程度,LPNO-CEPA/1レベルで1分程度,MP2やDFTは30秒程度となってます (Westmere Xeon 2.66 GHz, 12 core).CCSD(T)レベルの計算は,RI近似を使っていないこともあって,圧倒的に時間がかかります.他の方法はLPNO法やRI近似の効果もあってか非常に高速です.

計算方法

すべての計算はORCA 2.8.0.2で行いました.構造最適化はTPSS-D3/def2-TZVP(-f)レベルで行い,振動数計算によって平衡構造であることを確認しました.また,CCSD(T)計算を除くPost HF法のSCF,DFT計算,MP2項の計算ではRI近似を導入し,基底関数に対応する補助基底関数を使用しました.CCSD(T)はORCAのAO-CCSD(T)で計算しました.基底関数極限への外挿は,aug-cc-pVDZとaug-cc-pVTZの結果から,ORCAに実装された方法によって行いました.